大動脈瘤

大動脈瘤とは

 心臓の左心室から全身に向けて血液を送り出している太い血管を大動脈と言います。動脈瘤とは、血管組織の損傷により動脈内腔が部分的または全体的に拡張してこぶを形成する病気です。これが大動脈に生じたものが大動脈瘤で、治療せずに放置し破裂した場合、大出血をおこし死亡する恐れがあります。破裂してから救命することは難しい場合が多く、ある程度の大きさになると破裂の予防のために治療が必要となります。
 動脈瘤のできる場所が横隔膜よりも上の胸部にできるものを胸部大動脈瘤、横隔膜よりも下の腹部の領域にできるものを腹部大動脈瘤と言います。  動脈瘤そのものは存在しても基本的には無症状なので健康診断などでたまたま発見されることがあります。胸部大動脈瘤の場合は、瘤が大きくなると反回神経という声帯を支配する神経を圧迫するため、嗄声(させい:声がかすれること)を生じます。腹部大動脈瘤の場合は、痩せている方の場合、拍動する腫瘤を腹部に触れることがあります。 

大動脈瘤の診断方法

 主にCT、MRI、エコー、カテーテルによる血管造影検査などで診断可能です。最近ではMDCT(3D-CT)が解像度などの点で最も有用な検査方法と考えていますが、ヨード系造影剤を使用する点で腎臓に障害のある場合やヨード系の造影剤にアレルギーのある場合には使用しにくいという短所もあります。症例ごとに検討して、最適な検査を行うことが大切です。

大動脈瘤の治療方法

 動脈瘤が小さく特に症状のない時には、血圧を下げて動脈瘤が大きくならないようにするとともに、半年から1年に1度程度の定期的な検査を行って様子を観察します。大動脈瘤はある程度大きくなると破裂の危険性が生じてきます。破裂する際にはひどい痛みを伴いますが、通常は破裂するまでに症状がないことが多いため、ある程度大きくなれば症状がなくても予防的に根治的な治療を行う必要があります。
 治療が推奨される大きさの目安は胸部で6cm以上、腹部では5cm以上ですが、大きさだけではなく動脈瘤の形態や、拡大する速度も考慮する必要があります。動脈瘤を根本的に治療するためには以下の2つの方法があり、それぞれの長所と短所があります。

1)外科手術による治療

 従来から行われている効果的な治療法です。全身麻酔を行い外科的に拡大した血管を切り取り、人工血管に換えてしまう血管外科手術です。この方法は従来から行われており、手術の危険性と高い侵襲度(体に対する負担)は伴いますが、手術方法はほぼ完成しています。外科手術成績は近年著しく向上しており、長期成績についてもよく知られていますが、全身麻酔下で胸部や腹部の切開が必要です。カテーテル治療と比較すると侵襲度は大きくなります。

2)カテーテルによる治療

 局所麻酔により、鼠径部(足の付け根)を小さく切開し、そこからカテーテルという細い管を通し、その管を使って人工血管(グラフト)に金属を編んだ金網(ステント)を縫い合わせたステントグラフトを患者さんの動脈に移植する方法です。この方法は、外科手術と比較すると患者さんへの身体の負担が軽い新しい治療法です。身体への負担が少なく、外科手術と同様の効果を得ることができます。しかしながら、まだ新しい治療であり治療後は瘤の拡大や漏れ(エンドリーク)がないか、定期的にCT検査で確認する必要があります。


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