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末梢血管疾患に対するカテーテル治療

 当院では毎年150例前後の末梢血管インターベンション治療をおこなっています。下肢閉塞性動脈硬化症、また大動脈分枝の狭窄病変(腎動脈や鎖骨下動脈)に対する経皮的血管形成術から透析用のシャント血管に対する血管内治療まで、豊富な治療経験があります。また潰瘍をともなう重症下肢虚血(CLI)へも、皮膚科と協力いて診療にあたり、積極的に血管内治療を行っています。歩くときに足がだるくなく間欠性跛行をお持ちの患者さんや、足趾に潰瘍がある患者さんは、下肢切断に至る前に一度ご相談ください。

 

・バルーン形成術

 円筒形のバルーンカテーテルで狭窄部を拡張します。とくに限局性の病変であれば、通常の円筒形バルーンやカッティングバルーンで長時間拡張することで、良好な拡張を得ることができます。また、今後薬剤コーティングバルーンが使用可能となれば、より良好な長期成績が期待されます。

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・ステント留置術
 ステント(金属製のメッシュ状の筒)を閉塞部や狭窄部に留置することで、下肢動脈を拡張し血流を改善します。病変の形態や長さによって、通常の金属ステント、薬剤溶出性ステントやステントグラフト(人工血管と金属ステントを接着したもの)を使い分けています。
 
 薬剤溶出性ステント(Cook Zilver PTX)
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大腿膝窩動脈用ステントグラフト(ゴア バイアバーン)
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・クロッサー閉塞部貫通カテーテル 
 機械的振動をクロッサーカテーテルシステムの先端チップに伝搬させることで、血管内の石灰化した硬化病変を貫通させることができます。これまでバルーンカテーテルが痛か困難であった病変に対しても、石灰化を破砕することで治療できる範囲が広がります。
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・OUTBACKリエントリーカテーテル
 閉塞病変で順行性にガイドワイヤーが通過困難な症例では、末梢側を穿刺(distal puncture)して双方向性アプローチ(Bidirectional approach)を確立したり、リエントリーカテーテルを用いることで、高いガイドワイヤー通過成功率を保っています。
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<病変部位別の血管内治療>
 
・腸骨動脈領域における血管内治療
 腸骨動脈領域では、たとえ閉塞病変であっても血行再建に成功しステント留置できれば良好な長期成績が見込まれます。腸骨動脈の狭窄や閉塞病変に対してはステント留置術を基本とし、CTでの事前のプランニングや血管内超音波カテーテル(IVUS)を併用することにより、より短時間かつ安全に手技をすすめています。
 
・大腿膝窩動脈領域における血管内治療
 大腿膝窩動脈領域においては、病変形態に応じて、バルーン形成術を施行し、必要があれば自己拡張型ステント留置術をおこないます。2017年より大腿膝窩動脈用ステントグラフトが使用可能となり、これまで長期の開存がむずかしかった15cmを超える長区域の閉塞病変に対しても良好な開存が見込まれます。
 また本邦でも薬剤溶出性バルーンや、あたらしい薬剤溶出性ステントの使用が今後可能となれば、さらなる治療成績の向上が見込まれています。
 
・膝下動脈領域における血管内治療
 膝下動脈が閉塞または狭窄している患者さんに対する血管内治療は、現状バルーン拡張術しか本邦では認可されていません。そのため、治療の適応となるのは、安静時に足趾に痛みがある患者さんや、足に潰瘍をお持ちの重症下肢虚血(CLI: Critical limb ischemia)の患者さんが対象となります。ガイドワイヤ-通過後に、ロングバルーンをもちいて長時間拡張することで、血管の解離を最小限におさえて病変の拡張をおこないます。
 しかし、バルーン拡張のみでは、再狭窄を生じることが多く、傷の治癒までの間に再狭窄を認めた場合は、繰り返しバルーン拡張が必要となる場合があります。
 
 
文責:循環器内科 田崎(心血管インターベンション治療学会 認定医)

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