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経皮的左心耳閉鎖術

心房細動

心房細動による脳梗塞とその予防

 心房細動は、心房全体を電気が駆け巡り400-800/分のペースで心房が興奮するものです。年齢とともに増加する不整脈で、高齢化社会を背景に近年急増しています。65歳以上の15人に1人はこの不整脈をもっていると云われています(詳細は不整脈の根治を目指すカテーテル・アブレーションをご参照下さい)。
 心房細動が起こった際の大きな問題点は、動悸や胸部不快感などのさまざまな症状が出現するほか、あまりにも早い興奮のために心房が十分に収縮することができなくなり、小刻みに震えるような動き(細動)になることで、心房内の血液の流れが澱(よど)んで血栓が形成され、その血栓が全身に流れていくと、脳梗塞などの塞栓症を引き起こすことです。
 全身性塞栓症の予防法として「血液を固まりにくくして血栓ができにくくするお薬(抗凝固薬)」を生涯服用することが推奨されています。

経皮的左心耳閉鎖術(Watchman)

 抗凝固薬は、塞栓症の予防にはとても効果的ですが、血液が固まりにくくなるため、何等かの出血を来した際に止血が得られにくくなるという問題があります。実際に、消化管出血や脳出血などの出血リスクのために服用困難な患者さんや実際に出血を繰り返してしまう患者さんがおられます。このような方に対する新しい治療が、経皮的左心耳閉鎖術で、カテーテルを用いて心臓内で血栓のできやすいとされる左心耳を閉鎖することで、塞栓症のリスクを低減し、最終的に抗凝固薬の内服の中止を試みる治療です(すべての抗血栓薬を中止するわけではなく、術後半年を経て左心耳が良好に閉鎖された時点でアスピリンという抗血小板剤のみの内服とすることが一般的です。)。

経皮的左心耳閉鎖術の適応基準

心房細動をお持ちの方で、脳卒中を予防するために抗凝固薬を飲み続ける必要がある一方で、抗凝固薬を飲み続けることで、出血の危険が高く(過去に重大な出血を起こしたことのある方や抗血小板薬を既に内服されている方など)、長期間にわたる抗凝固薬の服用が困難な方が適応になります。

経皮的左心耳閉鎖術の実際

 全身麻酔下で左心房のなかの血栓が形成されやすいとされる左心耳という部分を閉鎖デバイス(Watchmanデバイス)で閉鎖します。
 足の付け根の大腿静脈からカテーテルを右心房に挿入します。その後、右心房から左心房に向けて穿刺を行い、左心房にカテーテルを進めます。カテーテルを通じて閉鎖デバイス(Watchman)を左心耳に進め、良好に左心耳が閉鎖される位置で閉鎖デバイスを留置します。この一連の手技は、経食道超音波画像や透視画像などをみながら行います。平均的な手術時間は1~2時間程度の手術となります。

 

 

経皮的左心耳閉鎖術の術後

 平均的な入院期間は術前を含め約5日-7日程度となります。閉鎖デバイスは術後約1か月程度で表面が内皮化されるといわれています。術後1か月半は抗凝固薬の内服を継続して頂き、外来で経食道超音波検査で左心耳の閉鎖に問題ないことを確認し、抗凝固薬を中止します。この時点では抗血小板薬といわれるお薬を2種類(アスピリン、クロピドグレル)内服頂き、術後6か月の時点で再度食道超音波検査を行い、左心耳の閉鎖に問題がないことを確認して、抗血小板薬(アスピリン)1剤のみの内服に切り替えることになります。

最後に

 心房細動の治療は経皮的左心耳閉鎖術以外にも、薬物療法やカテーテルアブレーションなど近年選択肢が増えてきています。詳しくは外来担当医にご相談下さい。


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