HOME > 基礎研究グループの活動 > 分子病態学研究グループ

分子病態学研究グループ

新着情報

2009年11月24日

我々の研究成果をNature Neuroscience誌に発表しました。 簡単な研究概要は、京都大学のホームページに紹介されています。
この研究成果は、日本経済新聞(11月23日朝刊12面)、読売新聞(11月23日朝刊2面)、毎日新聞(11月23日朝刊2面)、産経新聞(11月23日朝刊2面)、京都新聞(11月23日朝刊26面)、日刊工業新聞(11月23日朝刊15面)をはじめとする、多くの新聞に掲載されました。

2009年11月17日

大学院生松岡龍彦が、アメリカ心臓病学会でポスター発表を行いました。

2009年8月30日‐9月4日

グループリーダー西英一郎が、スイスで行われたゴードンリサーチカンファレンス(Matrix Metalloproteinases)で講演しました。同じ学会で、大学院生大野美紀子がポスター発表を行いました。

当研究室の概要

我々の研究は、グループリーダー(西英一郎)が増殖因子の結合蛋白質として同定した、ナルディライジンというメタロプロテアーゼ(M16ファミリー)の機能解析に端を発する。それまで同分子および類縁分子の生物学的機能は全くわかっていなかったが、抗体、血清濃度測定系、遺伝子改変マウスなど研究材料の開発を含む地道な研究の結果、現在我々のプロジェクトは、1)神経系ネットワーク形成・成熟機構、2)体温恒常性維持、3)糖脂質・エネルギー代謝制御、4)血圧・心拍数制御、など根源的な生命現象を司る、新たな分子機構解明へと大きな広がりをみせている。さらに、ナルディライジンの炎症性疾患、悪性腫瘍、アルツハイマー病など多彩な疾患の病態生理との関わりについても積極的に研究を進めている。

所属者

西グループ写真
  • 西 英一郎(グループリーダー:産学官連携准教授)
  • 平岡 義範(産官学連携助教)
  • 大野 美紀子(大学院生)
  • 松岡 龍彦(大学院生)
  • 西本 尚子(教務補佐員)
  • 光野 優人(医学部学生)
  • 白田 全弘(医学部学生)
  • 下仲 慎平(医学部学生)
  •  
  •  
ページの先頭へ

研究内容

1.細胞外ドメインシェディング誘導の分子機構

膜近傍部での蛋白分解により、膜蛋白質の細胞外ドメインが不可逆的に切断される現象を、細胞外ドメインシェディングと呼ぶ。非常に広範な膜蛋白質がシェディングされることがわかっているが、その機能の理解は限定的である。細胞外ドメインシェディングは、定常状態においても生じているが,細胞の活性化に伴い劇的に誘導される。生体においても厳密に制御されていると思われるが,その活性化機構はよくわかっていない。我々は、ヘパリン結合性EGF様増殖因子(HB-EGF)の新規結合蛋白質として、メタロプロテアーゼM16ファミリーに属するnardilysin (NRDc)(図1)を単離同定し(Nishi他 EMBO.J,2001)、更にNRDcがHB-EGF膜結合型前駆体のシェディングを増強すること、NRDcのシェディング増強効果はADAMプロテアーゼの活性化を介して,HB-EGFに限定されずアミロイド前前駆体蛋白質、TNF-αなど広範な膜蛋白質に及ぶことを明らかにした(Nishi他JBC,2006、Hiraoka他J.Neurochem,2007、Hiraoka, Yoshida他BBRC,2008)。

図1

我々はこれらの結果をもとに、シェディングの活性化における『NRDc-ADAMsシステム仮説』、すなわち、シェディング誘導因子の刺激により①『NRDcの細胞膜上への移動』が起こり,②『ADAMsと結合』することで、③『ADAMsのコンフォメーション変化による酵素活性の増強』を起こし,その結果④『基質膜蛋白質の細胞外ドメインシェディングの増強』を誘導するという仮説を立てた(図2)。今後NRDcによるADAM活性化のより詳細な分子機構の解明を目指す。

図2

2.NRDcの生物学的機能の解明

個体レベルにおけるNRDcの生物学的機能を明らかにするため、NRDc欠損マウス(未発表:神戸理研との共同開発)を作製したところ、同ホモ接合体(NRDc-/-)はほぼメンデルの法則にそって誕生したが、約70%が48時間以内に死亡した。NRDc-/-の出生時体重はNRDc+/+の70%程度で、生後の成長遅延も認めたが、生き残ったNRDc-/-は摂食能、運動能に一見問題なく少なくとも二歳になるまで元気に発育した。未発表のため、詳細の公開は論文発表に合わせて順次更新していきたいが、NRDc-/-は中枢神経系、内分泌代謝系、心血管系などに非常に多彩な表現型を呈した。非常に多彩な表現型を呈したことは、①「NRDcが活性化にかかわっている切断酵素、基質膜蛋白質が多岐にわたっている」からと考えられる。一方多彩な表現型を呈してはいるものの、生後48時間を乗り越えれば長期生存可能であることは、②「シェディングの活性化は損なわれているものの、切断酵素自体は存在しているため基礎レベルのシェディングは保たれている」からと推測することができる。我々が細胞レベルで明らかにしてきた、NRDcの細胞外ドメインシェディング活性化機能と、この欠損マウスの表現型を結びつけることで、今まで全くわかっていなかった『個体におけるシェディング活性化の意義』に迫りたい。
 NRDcの細胞内分布はユニークで、明らかなシグナル配列はなく主に細胞質に存在するが,何らかの機序をもって細胞外に運搬され,一部は細胞表面にも留まる。さらに今回新たにNRDcが核移行することを明らかにした。興味深いことに、NRDcは核移行すると同時に細胞外へも分泌されていた。この現象は、NRDcが細胞外と核内において、異なる機能をもって細胞環境を制御している可能性を示唆する。従って、多彩な個体表現型の少なくとも一部は、③「NRDcのシェディング活性化以外の分子機能」に原因があるかもしれない。

3.NRDcの病態生理学的意義の解明

アミロイド前駆体タンパク質(APP)は異なるセクレターゼにより3カ所(α、β、γ)で切断されるが、アルツハイマー病の原因と考えられているアミロイドβは、βおよびγセクレターゼで切り出される。一方、αセクレターゼは図3に示すように、アミロイドβをその中程で切断することで、同産生を抑制すると考えられている。ADAMプロテアーゼのメンバーがαセクレターゼであることが報告されていることから,我々はNRDcのアミロイド代謝における効果を検討した。細胞レベルの実験では、予想通りNRDcがアミロイド前駆体タンパク質のα切断を増強することで、アミロイドβの産生が抑制された(図3:Hiraoka他J.Neurochem,2007)。

図3

現在、神経細胞特異的NRDcトランスジェニックマウスとアルツハイマー病モデルマウス(アミロイドβ過剰沈着)との交配実験を行っている。マウス個体レベルでも細胞と同じく,NRDcのアミロイドβ抑制効果が認められるかどうか興味深い。
その他、いくつかの疾患モデルマウスと、NRDcのノックアウトあるいは臓器特異的強発現マウスとの交配実験が進行中である。
一方我々は、ミクリ免疫研究所、三洋化成工業株式会社との共同開発で、ヒト血清NRDcを高感度で検出できるELISAシステムの開発に成功した。現在様々な疾患における血清NRDc濃度の検討を行っている。

ページの先頭へ

発表論文

  1. Ohno M, Hiraoka Y, Matsuoka T, Tomimoto H, Takao K, Miyakawa T, Oshima N, Kiyonari H, Kimura T, Kita T, and *Nishi E. Nardilysin Regulates Axonal Maturation and Myelination in the Central and Peripheral Nervous System Nat. Neurosci. 2009; 12: 1506-1513. * Corresponding author
  2. Hiraoka Y, Yoshida K, Ohno M, Matsuoka T, Kita T, Nishi E*. Ectodomain shedding of TNF-alpha is enhanced by nardilysin via activation of ADAM proteases. Biochem. Biophs. Res. Commun. 2008; 370: 154-8. * Corresponding author
  3. Matsuda M, Kobayashi Y, Masuda S, Adachi M, Watanabe T, Yamashita JK, Nishi E, Tsukita S, Furuse M. Identification of adherens junction-associated GTPase activating proteins by the fluorescence localization-based expression cloning. Exp Cell Res. 2008; 314: 939-49
  4. Furukawa K, Fujiwara H, Sato Y, Zeng BX, Fujii H, Yoshioka S, Nishi E. and Nishio T. Platelets Are Novel Regulators of Neovascularization and Luteinization during Human Corpus Luteum Formation. Endocrinology, 2007; 148: 3056-64
  5. Hiraoka Y, Ohno M, Yoshida K, Okawa K, Tomimoto H, Kita T, Nishi E*. Enhancement of alpha-secretase cleavage of amyloid precursor protein by a metalloendopeptidase nardilysin. J Neurochem. 2007; 102: 1595-1605. * Corresponding author
  6. Furukawa K, Fujiwara H, Sato Y, Zeng BX, Fujii H, Yoshioka S, Nishi E, Nishio T. Platelets Are Novel Regulators of Neovascularization and Luteinization during Human Corpus Luteum Formation.Endocrinology, 2007; 148: 3056-64
  7. *Nishi E, Hiraoka Y, Yoshida K, Okawa K, Kita T. Nardilysin enhances ectodomain shedding of heparin-binding EGF-like growth factor through activation of TNF-alpha converting enzyme. J Biol Chem. 2006; 281: 31164-72. * Corresponding author
  8. Ohtsuka T, Imayoshi I, Shimojo H, Nishi E, Kageyama R, McConnell SK. Visualization of embryonic neural stem cells using Hes promoters in transgenic mice.Mol Cell Neurosci. 2006; 31: 109-22.
  9. Nishi E and Klagsbrun M. Heparin-Binding Epidermal Growth Factor-Like Growth Factor (HB-EGF) is a Mediator of Multiple Physiological and Pathological Pathways. Growth Factors. 2004; 22: 253-260.
  10. Park PW, Foster TJ, Nishi E, Duncan SJ, Klagsbrun M and Chen Y. Activation of syndecan-1 ectodomain shedding by Staphylococcus aureus α and β toxins.J Biol Chem. 2004; 279: 251-258.
  11. Goishi K, Lee P, Davidson AJ, Nishi E, Zon LI and *Klagsbrun.Inhibition of zebrafish epidermal growth factor receptor activity results in cardiovascular defects. Mech Dev. 2003; 120: 811-822.
  12. Nishi, E., Higashiyama, S. and Klagsbrun, M. Heparin-binding epidermal growth factor-like growth factor. In Henry, H. L. and Norman, A. W. (Ed), Encyclopedia of Hormones. 2003; 2: 235-241. Academic Press, San Diego.
  13. Hospital V, Nishi E, Klagsbrun M, Cohen P, Seidah NG, Prat A.The metalloendopeptidase nardilysin (NRDc) is potently inhibited by heparin-binding EGF-like growth factor (HB-EGF).Biochem J. 2002; 367: 229-238
  14. Jin K, Mao XO, Sun Y, Xie L, Jin L, Nishi E, Klagsbrun M, Greenberg DA.Heparin-binding epidermal growth factor-like growth factor: hypoxia-inducible expression in vitro and stimulation of neurogenesis in vitro and in vivo. J Neurosci. 2002; 22: 5365-73.
  15. Nishi,E., Prat,A., Veronique,H., Elenius,K. and Klagsbrun,M.N-arginine dibasic convertase is a specific receptor for heparin-bnding EGF-like growth factor that mediates cell migrationEMBO J. 2001; 20: 3342-50.
ページの先頭へ

掲載記事

当グループの平岡さんが、2009年度 稲森財団研究助成受賞者50名中1名に送られる「伯楽」の称号を得、京都新聞、読売新聞などで紹介されました。記事の詳細はこちら

ページの先頭へ

メンバー募集

分子病態学研究グループでは、熱意を持って一緒に研究してくれるスタッフ(医員、大学院生、学生)を募集しています。
連絡は西英一郎までE-mailでお願いします。

(e-mailの場合、タイトルは、「分子病態学研究グループ スタッフ募集について」と記載してください。尚、京都大学医学部附属病院のサーバーシステムの事情により、メール受信がブロックされる場合があります。)


ページの先頭へ