72歳男性H.Yさん
1.ご職業は何ですか?
2.心筋梗塞の発症日、既往歴はいつですか?
3.喫煙歴は?
担当医からのコメント
喫煙はわが国のような先進国において疾病の原因の中で防ぐことの出来る単一で最大のものであり、禁煙は今日最も確実にかつ短期的に大量の重篤な疾病を劇的に減らすことのできる方法です。すなわち、禁煙推進は喫煙者・非喫煙者の健康の維持と莫大な保険財政の節約になり、社会全体の健康増進に寄与する最大のものと言っても過言ではありません。ただし、この方の場合のように、大昔に喫煙していたというのは心血管疾患のriskにはなりません。
4.心筋梗塞の発作はいつ、何をしているときにおこりましたか?
担当医からのコメント
普段と明らかに異なった胸部症状が出現した場合には、躊躇うことなく救急車を要請して頂きたいと思いますが、日頃から健康に自信のある方は、かえって難しいことなのかも知れませんね。心筋梗塞は緊急に治療する必要があります。心筋梗塞による死亡の半数は、症状が現れてから3~4時間以内に亡くなっています。治療を始めるのが早いほど、生き残る可能性が高くなります。疑わしい症状があれば、すぐに救急車を呼ぶべきです。訓練を受けた隊員が乗っている救急車で、病院の救急外来へ迅速に運ばれれば、救命率が上がります。かかりつけ医、家族、友人、隣人などに連絡することは、無駄に時間を費やすので、危険です。
5.その発作は具体的にはどのようなものでしたか?
担当医からのコメント
この場合も、救急車での搬送をお願いしたいところです。日頃の運動は心血管疾患の予防という観点から考えると、大変大事なことです。しかしながら、一旦発症した際には、運動しているから心停止をさけられるというものではありません。一刻も早く専門医による治療が必要となります。
6.急性心筋梗塞を発症される前になにか予兆のようなものはありましたか?
担当医からのコメント
もしかすると、この1回だけが、梗塞前狭心症の発作だったのかもしれません。冠動脈疾患に対する危険因子はどうだったのでしょうか。動脈疾患の発症に影響を及ぼす危険因子には、避けられるものと避けられないものがあります。避けることのできない危険因子には加齢、性別が男性、早期に冠動脈疾患を起こした家族歴(近親者で50~55歳未満でこの病気を発症した人がいる)などがあります。避けうる危険因子は、主に生活習慣にかかわるものです。そのような危険因子にはコレステロール高値、高血圧、喫煙(改善できる最も重大な危険因子)、高脂肪食、運動不足、肥満、ストレスなどがあります。
7.病院を受診し、どのような検査をうけましたか?検査について医師からどのような説明をうけましたか?
担当医からのコメント
遮断された冠動脈を早急に修復できれば、心臓の組織は助かります。冠動脈形成術(ステント植え込み術)や血栓溶解薬で血栓を溶かすという治療法があります。効果を得るには、心臓発作が始まってから6時間以内に行うことが望ましいとされています。しかしながら、6時間を過ぎても効果がないわけではありません。 60~80%の人は初期治療によって血流量が増え、心臓組織の損傷が最低限に抑えられます。血小板が血栓を形成するのを防ぐアスピリンやヘパリンは、これらの治療効果を増強します。
8.病院ではどのような治療をうけましたか?治療について医師からどのような説明をうけましたか?
担当医からのコメント
治療法は個々の症例によって異なることがあります。最前の治療法を安心して受けて頂けるように詳しく内容を説明致します。
9.病院に入院中に、あるいは退院後に一番大変だったことはなんですか?それをどうやって解決してゆかれましたか?
担当医からのコメント
回復には心臓リハビリテーションが重要なため、入院中から開始します。2、3日以上ベッドで安静にしていると体力が低下して、うつ病や無力感の原因となることもあります。合併症がなければリハビリテーションを開始し、1日目にはいすに座る、手伝ってもらいながら体を動かす、いす型の室内用便器を使用する、本を読むなどから始めます。2日目あるいは3日目には歩いてトイレまで行ったり、負担にならない程度の運動ができるようになり、その後は日ごとに活発に動けるようになります。不眠や個別の症状に対しても、きめ細やかに対応致しますので、何でもおっしゃって下さい。
10.病院に入院して、あるいは退院後に、なにかよかったと思えることがありましたか?
担当医からのコメント
医師のみならず、看護師、臨床検査技師、事務の方など、チームを組んで治療にあたっています。
11.心筋梗塞の病気を経験されて、生き方や人生観について変化がありましたか?
担当医からのコメント
京都大学循環器内科においては、臨床のみならず、基礎研究にも大変力をいれており、世界に向けて新しい診断、治療、予防法を提唱できるよう日々努力しています。
12.実際に心筋梗塞を発症されるまでに、ご自身が心筋梗塞を起こすかもしれないと思っていましたか?
担当医からのコメント
この方の例からも分かるように疾患の予防、予知という点で、まだ万全ではありません。日々我々も努力していきたいと思います。
13.食事や運動について、発症前とあとで変化がありましたか?現在食事や運動についてなにか工夫されていますか?
担当医からのコメント
物事に対して熱心で努力型であるためにストレスをためやすい人(性格)も冠動脈疾患の危険因子とされています。
14.社会に対して、患者様に対して、あるいは医師に対してなにかメッセージがありましたらお答え下さい。また、入院中あるいは現在うけられている医療について不足にお感じになる点や、なにか「こうしたほうが良い」とお考えになる点がありましたらお教えください。
担当医からのコメント
貴重なご意見をありがとうございます。至らない点も多いかと存じますが、日々努力して改善していきたいと思います。