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マイコース・プログラム 海外研修レポート 京都大学医学部医学科4回生 岸 大智

1.背景・目的
 私はかねてからマイコースプログラムで海外留学をしたく思っており、この度京都大学循環器内科尾野亘先生やスタンフォード大学西賀雅賀先生のご厚意のもと9/2から約2週間Stanford Univ. Dr.J.C.Wu Labにて研修させていただきました。
 私がマイコースプログラムで循環器内科にお世話になった理由としては、1回生の頃の早期体験実習で倉敷中央病院の循環器内科にて実習をしたことがあげられます。さらに、冬学期に行われた循環器の講義で一層興味を惹かれました。また、かねてから海外での実習というものには興味があり、ぜひマイコースプログラムで海外留学をしてみたいと思っておりました。これらのことから、尾野先生にお願いしてみたところ、快く承諾してくださり今回の海外研修が実現しました。

2.研修内容
beatingcell.png〈研究見学〉
 スタンフォード大学の厳しいプロトコルのため自分で研究、実験をすることはできなかったのですが、日々の研究風景を間近で見学することができました。西賀先生の飼っているiPS細胞を顕微鏡で見させていただき、心筋細胞へ分化し実際にbeatingしているさまを見るととても感銘を受けました。

〈ミーティング、セミナー、シンポジウム〉
 毎日ラボミーティングやセミナー、シンポジウムなどが行われており参加させていただきました。日々の研究がどのようなプロセスを経て進行しているかや、ラボメンバーが協力し合って実験が進んでいる様子などが垣間見えました。こういったセミナーやシンポジウムに参加する機会は今までなかったので大変新鮮な経験ができました  

〈脳死ドナーからの臓器摘出手術見学〉
 スタンフォード病院で心臓外科をしていらっしゃる首藤先生のご厚意で脳死ドナーからの臓器摘出手術の見学をさせていただいた。この見学はスタンフォードでの2週間の実習の中でも最も記憶に残るものの一つとなりました。手術が行われる病院のある隣州までNASAから小型飛行機に乗って向かうところから、手術室に入って間近に手術の見学をさせていただいたことまですべてがすばらしい体験でした。このような機会を手配してくださった西賀先生、首藤先生には大変感謝いたします。

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【NASAにて】
 

3.海外研修を行うにあたって
〈ビザについて〉
 長い期間アメリカへ留学へ行く人はビザを取るのが大変みたいですが、私の場合は2週間という短い期間だったので、ビザを取る必要はなくESTAというビザ免除プログラムを使うことができました。ESTAはネット上で申請することができ、時間もかからないので難なく取得することができました。

〈生活について〉
 スタンフォード大学近くの宿をBooking.comで調べました。大学からすぐ近くというわけにはいかなかったのですが、近めの場所に高すぎない宿を見つけることができました。4月中には宿は予約していました。少しボロめの宿だったのですが、治安もよく特に困ったことはありませんでした。(スタンフォードはアメリカの中でも一番と言っていいほど治安がいいらしいです。)
kishi_2.PNG 最初は宿から大学まではUberを使って向かっていたのですが、西賀先生ご夫妻が自転車を貸してくださったため、それからは毎日自転車通学していました。時間は30分ちかくかかっていましたが、毎朝ザ・アメリカといったような街並みを眺めながら自転車で通学するのはとてもすがすがしい気分でした。
 食事に関しては、昼食は大学の食堂、夕食は自転車を使って宿近くのレストランに食べに行くといった感じでした。幸いにも宿の近くには食べるところが多かったので、困ることはありませんでした。

〈週末の過ごし方〉
kishi_3.PNG 西賀先生がナパ(世界有数のワイン産地)に連れて行ってくださったり、サンノゼまで観光に行ったりしました。西海岸は夏は基本的には快晴が続いて雨が全く降らないので、気持ちよく観光できました。
 幸か不幸か、台風21号の影響により帰りの関空着の飛行機が成田着に振り替えられたため、アメリカ滞在が2日ほど伸びてしまいました。そのため最後の週末はサンフランシスコに新しく宿を予約してサンフランシスコ内を観光しました。サンフランシスコジャイアンツのゲームを見たり、サンフランシスコ湾で観光フェリーに乗ったりといい思い出になりました。

4.おわりに
 今回マイコース・プログラムを通じて、実験・研究というものがどのように行われているのかを学習することができました。スタンフォードでの生活は2週間という短い期間でしたが、大変刺激的な毎日を過ごすことができました。スタンフォード大学の厳しいプロトコルのため、自分で実験を行うということはできなかったのですが、実験の見学、ラボミーティングへの参加を通じて自分の中の実験・研究のイメージが具体的なものになっていったと感じました。いろいろな国籍の人たちが研究に励む環境は、日本では経験できない大変素晴らしい体験でした。また、脳死ドナーの臓器摘出手術の見学という非常に珍しい体験ができたことは大変ありがたいことでした。海外での研究医や臨床医のあり方を垣間見ることができ、自分の中で将来海外留学をしたいという思いが強まりました。また、アメリカでの生活を経験することで、自分の英語力の現状を実感することができ、さらなる英語力の向上が不可欠だということを痛感させられました。このマイコース・プログラムで学んだこと、感じたことを無駄なくこれからの人生に生かしていきたいと思います。


 

スタンフォード大学での研究見学 京都大学医学部医学科4回生 大森 碧

 僕は3回生の9月ごろから循環器内科の研究室に通っている。今夏マイコースプログラムとして、尾野先生と西賀先生のご厚意でアメリカのスタンフォード大学にて2週間ほど研究見学をさせて頂いた。僕自身海外の研究風景や雰囲気に触れたかったこともあり、とても充実した2週間であった。
 スタンフォード大学の研究室では、僕が見学した所では、iPS細胞から心筋を作りその作成した心筋に薬を投与することで薬の心毒性を調べるという実験をしていた。そのなかでも僕は主にiPS細胞から心筋を作る過程を見学した。
 心筋ができるまでおよそ1ヶ月かかる。初めはただの細胞集団に見えるもの(図1)が3週間もすればシート状になり実際に拍動している様(図2)は心筋そのものであり、iPS細胞を初めてみた僕は強く興味をそそられた。

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      図1          図2(実際は拍動している)

 加えるのは合計10因子にも満たないが、それでも1ヶ月後には立派な心筋ができるところを見てiPS細胞の樹立の偉大さを感じた。この心筋で心毒性を調べられるために、将来的には薬を投与する前に患者の細胞から心筋を作成し薬を試すことで、心毒性の副作用を予防できるかもしれない。
 来る前は研究室にはアメリカ人ばかりかと思っていたが、アジア人もとても多く、様々な国の人が隣同士で研究していてとても新鮮だった。皆さんとてもフレンドリーに話してくれ緊張もすぐにほぐれた。またスタンフォード大学で多くの日本人の方と話すこともできた。なかでも心臓外科医をされている先生のお言葉で、「海外に行くことは必須とは全く思わないが、自分の視野、可能性をとても広げる。日本だけでは無理かな。」というのが印象的だ。実際2週間だけだったが、僕自身海外で研究したり臨床に関わったりしてみたいと思えただけでも自分の可能性を広げてくれたと思う。
 今回スタンフォード大学で見学できて本当に良かったと思うし、勉強や研究に対するモチベーションも上がった。
 最後になりますが木村先生、尾野先生、堀江先生、西賀先生、日本・スタンフォードで関わってくださったすべての方に心からお礼申し上げます。


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