UCSD

UCSDでの研修レポート 京都大学医学部医学科4回生 青木 光

今回、私はUniversity of California San Diego(UCSD)のSylvia Evans研で研究されている平井稀俊先生のもとで、研修させていただきました。
まず初めに、海外研修の準備として、六月より京大の循環器内科で論文抄読会を行いました。これは、自分の担当の会に、各自研修を行う研究室から出ている論文を読み、参加者にパワーポイントなどを用いて論文の内容を説明し、尾野先生に補足、解説していただく、というものでした。これを、週に一、二回ほど行いました。これにより、例えばCre-loxPシステムといった、Sylvia研でよく用いられている手法など、最低限の知識は身につけることができ、また心臓発生の領域の用語についても、ある程度触れることができました。
現地Sylvia研では、基本的に平井先生について、見学、実習をさせていただきました。毎日朝9時から夜7時までの長い時間、研究室にいさせてもらい、さまざまな実験をさせていただきました。今まで私は研究室に通った経験がなく、学校の実習でしか基礎実験をしたことがなかったので、させていただいたひとつひとつが新鮮で、良き経験になりました。Sylvia研では、短い期間にも関わらず、マウスのプラグチェック、ジェノタイピング、ダイジェスション、ライゲーション、embryoの凍結切片作り、電顕やCLSMでの観察など、様々なことをさせていただきました。また、ラボミーティングにも参加させていただきました。学校の実習で一度は行ったことがある手法でも、今回は、実際に先生が研究されているサンプルを使用させていただいたので、非常に緊張しました。また、英語のプロトコールに従って行う作業もありました。
特に印象に残ったことについて書かせていただきます。まずは、ブレインボーマウスというマウスの観察です。ブレインボーマウスとは、Cre-loxPシステムを応用して、5種類の違った蛍光蛋白をひとつのマウスに発現させた特殊なマウスです。特殊なレーザー顕微鏡で観察させていただくと、違う領域に別の蛍光蛋白がきれいに発現しており、発生の過程が一目でわかり、感動的でした。また、Embryoの凍結切片作りでは、顕微鏡下でのembryoの摘出も少しさせていただきました。顕微鏡下でピンセットを扱うのも初めてで、最初は焦点を合わせることすら難しく感じましたが、専用の機会で10μmの厚さで切片を作っていく作業は、難しさとともに、楽しさも感じました。そして、一番印象に残っているのは、ラボミーティングに参加させていただいたことです。他のポスドクの方の発表の回で、現在行っている実験の結果などのプレゼンを聞かせてもらいましたが、自分の英語力の無さを痛感することとなりました。もちろん、実験内容は難しく初見の内容を聞くので、そもそも理解しにくい上、聞き慣れない用語を自分のなかで日本語に置き換えているうちに、話はどんどん先に進み、ますます理解できなくなる、といった状況でした。英語の必要性を実感し、留学する上での厳しさを体感できたことが、ラボミーティングでの一番の収穫でした。また、実験の発表に対して、厳しい批評がトップから次々になされていたのが印象的で、仕事に対する熱意を肌で感じることができたのも、良き経験でした。
日本との違いについて少し書かせていただくと、UCSDでは、実験で必要なもの、たとえば酵素といったものが学内ですぐに購入できる仕組みとなっておりました。実験中、たとえ足りなくなったとしても、実験が滞ることがない、とのことでした。また、特殊な顕微鏡といった高価な機械は、専用の場所にまとめて置かれており、時間当たり一定のお金を払えば、どこの研究室の人でも使える、という制度でした。この制度のおかげで、普段あまり使わない高価な機器も、各研究室で高い費用を払って購入する必要がなく、効率よく使用できるそうです。こういった点でも、日本との違いを感じました。
今回、短期ではありましたが、平井先生のもとで研修させていただいたことは、非常にありがたく、本当に良き経験となりました。実際に海外で研究、生活されている先生の姿を拝見し、直に話を聞けたことは、自分の将来の選択の際に、大いに参考になることと思います。今まで、海外留学に漠然とした印象しかありませんでしたが、今回の研修を通して、そしてなにより、平井先生が現地で充実した研究をされ、生き生きと生活されている姿を拝見したことで、海外留学というものが自分の中で少しだけ身近な存在に、そして魅力的な存在に変わりました。また、海外留学の良さを実感するだけでなく、英語力の無さを痛感するといった、留学の厳しさも体感できたことも、大きな収穫だったと思います。平井先生には、お忙しい中、ご迷惑をおかけしましたが、最後まで親切に教えていただき、また食事や研究室の飲み会にも連れて行っていただき、本当に感謝いたします。
最後になりましたが、論文抄読会にもお忙しい中毎回来ていただき、またこのような貴重な機会を与えてくださった京大循環器内科の尾野先生、本当にありがとうございました。

 

 

University California, San Diego Sylvia Evans 研 訪問レポート
京都大学医学部医学科4回生 池上香緒里

1、はじめに
私は今回、Californiaの最南端のSan Diegoにあります、University California, San DiegoのSylvia Evans研を訪問させていただきました。今回の訪問は、中川義久先生、尾野亘先生がS1循環器内科の講義でアナウンスしてくださり実現しました。具体的には、尾野先生が、Sylvia Evans研におられる平井稀俊先生をご紹介してくださり、Sylvia研では直接平井先生にお世話になりながら、勉強させていただきました。

2、訪問までに
Sylvia Evans研を訪問するまでに、尾野先生のご厚意で、論文抄読会を何回かひらくことができました。私たち学生が、1人ずつ循環器に関する論文を選び発表するというものです。
私は、Sylvia研からでた、「A myocardial lineage derives from Tbx18 epicardial cells」という論文を読みました。この論文を抄読会で発表することによって、目的のlocusにレポーター遺伝子であるlacZをノックインすることで発生過程での発現を可視化する研究手法や、loxPに挟まれたstop codonの下流にlacZをノックインしたマウスと目的のlocusにCreをノックインしたマウスをかけ合わせることで、Cre-loxP recombinationを応用してlineageを追う研究手法などを勉強することができました。また発表中は尾野先生が何度も補足してくださり、理解が深まりました。
もちろんSylvia研でも、平井先生がこのような内容を教えて下さいました。しかし、こういった研究手法を全く知らないと、一度で理解するのはなかなか難しいと思います。その点では、事前に論文を読んでおいたことがとても役立ちました。また、短期間の訪問ではなかなか分からない、研究の長期的な流れを知ることができました。

3、訪問
実際に訪問したSylvia研では、平井先生に文字通り手取り足取り教えて頂きました。Sylvia 研は大まかに言うと heart developmentを研究している研究室です。
例えば、マウスの子宮からembryoを顕微鏡下で取りだし固定する作業や、凍結固定したものを手回しの機械を用いて、薄くスライスしてスライドガラス上に切り出して切片を作成する作業などを平井先生に丁寧に教えてもらい、実際にやらせていただきました。平井先生の作業をみていると、とても軽々と行っていて、簡単な作業のように思えましたが、実際に自分でやってみると、なかなか難しくコツをつかむまでが大変でした。凍結切片の作成は、何度かトライしてコツをつかむことができました。自分で作らせていただいた切片を実際に共焦点(confocal)顕微鏡で見たときは感動しました。embryoを顕微鏡下で取り出す作業は何回もできるものではなく、最後まであまり上手くは出来ませんでした。顕微鏡下での距離感をつかむのがなかなか難しかったです。その時に平井先生に「僕も最初はうまくできなかった。すぐに出来るような簡単な事をずっとやっていてもつまらないから、こういう作業も面白いよ。」とフォローして頂き、感動しました。なんとかして取り出したembryoは実際に見るのは初めてで、その小ささや何とも言えない色を良く覚えています。
また、共焦点顕微鏡で観察する為に使用した顕微鏡室はとても印象的でした。Light microscopy facilityという名の場所に、たくさんの小部屋があり、その中に顕微鏡がおいてあります。そこには今回使用したような最新の顕微鏡がいくつかありました。ここはUCSDの一つのfacilityになっていて、そこにある顕微鏡を利用したい研究者が時間を予約し、1時間約30ドルの使用料を払う事でどの研究室の研究者も共同でそれらの顕微鏡を使用できるようなシステムになっていました。確かに、それぞれの研究室で別個に顕微鏡を購入していたのでは、コストの面から最新の機器はなかなか購入できません。このように大学で共同購入し、共同使用し、使用料を規定するというシステムはとても効率的だと思いました。このようなアメリカの研究システムの一端を知ることができたのも収穫の一つです。
その他にも、研究室ではマウスのtailを使用して欲しいマウスができているかgenotypingをしたり、miniprep、digestion、ligation、transformationの一連の作業を行ったりしました。Transformationの結果が思ったようにいかず、一連の作業を何度かやりなおしたりもしました。プロトコルを眺めているだけでは分からない研究の難しさも少し知ることができました。
慣れない実験で失敗などもありましたが、そのなかでもあまり落ち込まずにいれたのは、San Diegoのカラッとした爽やかな気候や、美しい景色、のびのびした緑がいっぱいのキャンパス、平井先生の優しく明るいお人柄、優しく迎え入れてくれたポスドクの方たちのおかげだと思います。
例えば、lunch timeは、coffee cartというキャンパス内にある屋外の憩いの場で、研究室のポスドクの方たちと一緒に食べていました。午前の実験が上手くいかなくても、緑いっぱいの景色を眺めているとすごく和むことができました。また、平井先生をはじめ、Sylvia 研のポスドクの方たちは様々な国のご出身で国際色が豊かでした。みなさん面白い方たちばかりで、lunch timeにたわいもないことを話しリフレッシュし、午後の活力にしているのだなと思いました。京大の南部やルネでお昼を食べるのとは全く違う雰囲気で、こんなにきれいなところでゆっくりlunchを楽しみ、そして仕事を頑張る生活もいいなと思いました。
また、平井先生には実験室ではもちろんですが、夜ご飯に連れて行っていただき、これまでのご経験や、アメリカでの生活の裏話などたくさんのお話を聞くことができました。これまでは海外でのポスドク生活というと、まったく実感がなくどんなものか想像もできなかったのですが、平井先生のお話をお聞きすることで、医師になったあとにこのような道もあるのだなと一つの道として考える事が出来るようになりました。もちろん平井先生のお背中を追いかけるにはかなりの努力が必要だとは思いますが、これから将来の道を考える上で、とてもよいきっかけになりました。
最後に、優しく丁寧にご指導して頂きました平井稀俊先生、論文抄読会など訪問のための準備を整えて下さいました尾野亘先生、授業のアナウンスできかっけを作って頂きました中川義久先生などお世話になったすべての方への感謝の意を込めまして、レポートを終えさせていただきます。有難うございました。

 

UCSDでの研修を終えて 京都大学医学部医学科4回生 河内寛明

私は今回、青木・池上と共に、アメリカ西海岸の最も南、サンディエゴに位置するUCSDのSylvia Evans Lab.において、平井稀俊先生のもと研修を行わせていただきました。
1週間という短い期間であるうえ、3人ともラボ経験がほぼ皆無で、明らかに知識も技術も不足しているにも関わらず、平井先生には懇切丁寧に指導していただき、実に様々な経験をさせていただくことができました。お忙しい中、優しく指導していただいた平井先生、そして私たちを温かく迎えてくれたSylvia Evans Lab. の方々に心から感謝したいと思います。


Sylvia Evans Lab. ではマウスの胚を用いた心臓発生の研究をされています。そういった研究の中で必ず必要になる基本的な実験手技を大きく分けて3つ、実際に先生のサンプルを用いて教えていただきました。

まず1つめは妊娠中のマウスから胚を取り出し、凍結切片を作製し、共焦点顕微鏡でイメージングするというものでした。胚を取り出す作業では、先生は顕微鏡越しに2本のピンセットを扱いながらスムーズに胚を取り出して行くのですが、実際にやらせてもらうと、ある程度ピンセットは扱えてもマウスの解剖学の知識がないため、どこからどう取り出せばよいのかなかなかイメージできず、非常に難しかったです。凍結切片の作製も体験させていただきましたが、これも薄く切った切片が丸まってしまったり、ちぎれてしまったりとコツを掴むまで時間がかかりました。
また、今回扱ったマウスはBrainbowと呼ばれるCre-loxPシステムを応用したマウスで、遺伝子改変により細胞塊ごとに青や赤、緑や橙に光って見えるようにデザインされているものでした。初日に先生からこのBrainbowについて説明を聞いた後、ホテルに戻って自分で調べていると、まさに“rainbow”のような色鮮やかな画像を何枚も目にすることができ、大きく期待が膨らみました。そして3日目、実際にLeicaのSP5と呼ばれる共焦点顕微鏡でのイメージングを見学させてもらいましたが、驚くほどきれいな画像がその場で観察でき、また各波長で撮影した画像を重ね合わせると、それぞれの細胞塊の範囲がよく分かり、とても感動しました。

2つめはgenogtypingで、マウスの尾からDNAを抽出し、PCRをかけ、電気泳動を行うという基本的な操作を学びました。また、電気泳動の際に用いるアガロースゲル作りも教えていただきました。PCRやゲルの作製は以前に行ったことがありましたが、忘れていた点もあり、この機会に復習することができました。

そして3つ目はサンプルDNAを制限酵素で切断し、切断されたDNAをゲルから抽出、expression vectorにligationし、大腸菌に形質導入及び培養した後、ミニプレップを行ってプラスミドDNAを抽出するという一連の流れです。僕は3つのうち、主にこの実験を担当していました。研修の初日に、実験内容もほとんど理解していない状態で、何も考えず「僕がやります!」と言って勢いよく引き受けたものの、作業量そのものも多く、プロトコールが英語で書かれていたり、思うように大腸菌のコロニーができなかったりと、悪戦苦闘の連続でした。今思えば、常識で考えれば分かるような、的外れな質問を平井先生にすることも多く、また、最終的に有用なデータは1つも得られないまま研修期間が終わってしまい、非常に心苦しかったです。心底、渡米の前にもう少しラボに通って勉強しておけばよかったと後悔しました。


ところで、今回の研修を通じて、研究を行う環境に関して様々な日米の差を感じることができました。最も印象に残っているのは実験に用いるキットや試薬、酵素等を扱う店舗が大学構内にあり、必要なときは先生自ら買いに行く、という仕組みになっていることでした。
日本では、業者に必要な分を前もって発注し、ある程度の在庫はラボ内で抱えるのが一般的だと思いますが、それに比べ逐一買いに行く手間はあるものの、必要になる試薬等は思い立てばすぐ手に入るため、時間的なロスも無く、面白いシステムだと感じました。ただ大きな需要があってこそ成り立つものであって、日本で同様のシステムを維持するのは難しいかもしれません。

また、先ほどの共焦点顕微鏡のような高価な実験設備は、別の建物に集められ、1時間いくらで各研究者に貸し出されていたのも印象的でした。使用頻度がそれほど高くない場合、各研究室がそれぞれ購入するよりも極めて経済的で効率がよく、また高度な機械を扱う技師さんも共有することができ、非常に理にかなったシステムだと感じました。

ポスドクの方々のライフスタイルについては、実に自由度が高いと感じました。昼過ぎに“See you!”と言って帰って行く方がいたり、来たと思ったらすぐいなくなってしまう方がいたり、はたまた自分のPCからBGMとして音楽をかけている方がいたり。また、サンディエゴらしくマリンスポーツを嗜んでいる方も多いようで、プライベートも充実しているようでした。実験も各自のペースで進めているような印象を受けましたが、いざラボミーティングとなると、冒頭から遠慮なくボスによる厳しい質問や指摘が飛び、ディスカッションは白熱し、全く聞き取れない速さで英語が飛び交い、大きな衝撃を受けました。
このラボミーティングに限らず、ラボ内には英語を母国語としない方も大勢いるにも関わらず、彼らの英語での会話が早すぎて全くリスニングできないことがしばしばあり、英語の必要性、特にリスニング力をつける必要性を痛感しました。


私はもともと臨床医志望であり、基礎研究者としての道はあまり身近なものとして感じることができませんでした。基礎研究に至る道のりも、研究者としての生活もイメージできないような状態でしたが、今回の研修を通じ、自分の目で見て、そして平井先生の話を聞いて、自分の将来のキャリアにおいて基礎研究に身を投じることも少し想像できるようになりました。平井先生が一度、病院勤務を経ていること、それから僕が基礎研究者に対して抱いていたイメージとは違い、本当に明るく楽しく、親しみやすい先生であったことも、そういった自身のキャリアパスに対する考え方の変化に間違いなく繋がりました。今回の研修で学び、感じたことを参考に、自分の将来を考えていこうと思います。


最後になりましたが、このUCSDでの研修をご紹介いただき、研修に先立ち行った論文抄読会にて毎回指導していただいた尾野先生にも心から感謝いたします。大変貴重で充実した経験をすることができました。ありがとうございました。


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