Detroit

デトロイト病院実習レポート 京都大学医学部医学科4回生 伊藤 秀一

本実習は非常に貴重で、エキサイティングで、心に深く刻まれております。このような機会を用意してくださいました山崎先生を始め、奥様、中川先生、尾野先生、たくさんのみなさまのお力添えに心から感謝申し上げます。
以下は実習中の日記を中心に、時系列で実習のレポートを書かせていただきます。

2012/1/20(金)から2012/8/3(金)まで 研修前の準備――論文抄読会とポリクリ――
今回の実習はS1循環器内科学・心臓血管外科学の講義の中で、2012/1/20(金)に臨床教授である中川先生が担当された「急性冠症候群の病態と治療」の回の冒頭で紹介されました。講義は最初から出席するとよいことがあるな、と実感いたしました。そこから中川先生、尾野先生にアドバイスを頂きながら、学年に公募を行い、応募者間で相談することによって、同じく臨床教授であり、アメリカで開業医をされている山崎先生のもとでお世話になる3人、青木、森、伊藤が決定されました。
その後、循環器内科から海外に派遣していただく予定の学生全員で、尾野先生にお付き合いいただき、論文抄読会を開催しました。論文の内容については、マイコースプログラムは別の研究室でGPCRの1分子イメージングを行うこともあって、私はアドレナリン受容体の結晶構造に関する、完全に基礎系の論文を選びましたが、他のメンバーはCirculation、Nature、The Journal of Clinical Investigationなどから臨床寄りな論文を選んでいました。テストが毎週ある時期で、準備するときは大変でしたが、同級生の面白いプレゼンが聞けて、聞く分にはもっともっと聞きたいと思える会でした。
論文抄読会が7月に一段落し、そこで読んだ論文の著者の方も来られるということもあり、「第13回京都糖尿病動脈硬化研究会」に参加させて頂きました。たくさんの先生方が来られていて、一口に大学での研究といっても、さまざまな先生方がいろいろな切り口で研究されていることを実感いたしました。また、食事会のときに、先生方と1対1で話す機会があったのも生の声を聞くことができて、よい機会となりました。
続いて、7月末からデトロイトへ行くメンバー3人と希望者1人で、1週間だけ京大病院にて臨床実習を行いました。実際に病棟に出るのは初めての体験で、緊張しつつも充実した内容でした。聴診器を使ったのも、ピッチを持ったのもこのときが初めてでした。最後の日に、自分の受け持ち患者さんと患者さんに関連する論文を発表し、修了となりました。やはり患者さんを目の前にすると緊張しますし、日本の医師の働きぶりを垣間見ることができて、自分の将来像をイメージすることができ、身の引き締まる思いでした。5回生からの生活を先取り体験できたのも良かったです。
その後2週間ほど、海外研修への荷造りや飛行機、パスポート、保険、ESTAの確認などをしながら過ごしました。余談になりますが、飛行機のチケットは5月くらいには用意しておいた方がよいと思います。時期が遅れると高いチケットしか残っていません。デトロイト行きが決まったらすぐに手配しましょう。

2012/8/18(土) デトロイトへ
大阪からの直行便はなかったので、実家が三重県ということもあり、中部国際空港(NGO)からのデルタ航空直行便(DL630便)を利用しました。デトロイト・メトロポリタン空港(DTW)のマクナマラターミナルに着いて、入国審査を受けましたが、最初、入国目的をSightseeingと答えていたところ、「デトロイトの1週間の滞在で、目的が観光だけということはないだろう」と入国審査官に指摘され、面食らいました。ちゃんとto visit Dr. Yamasakiと言った方がトラブルは少ないと思います。知り合いに会いに行くというとスムーズに進むようです。この日は1人、飛行機が遅れたのと入国審査のシステムトラブルで到着が遅れ、ホテルParkcrest Innには17:00ごろ着きました。山崎先生に電話で連絡し、初めてお会いして、街並みを紹介していただきました。大きな湖や市民公園の広さには驚きました。St. John病院にも案内していただき、その大きさ、綺麗さに圧倒されました。夜は近くのスーパーKrogers(徒歩だとホテルから30分くらい)に寄っていただき、食料(パンやフルーツなど)と日用品(フォーク、ナイフ、コップなど)を買ってホテルに戻りました。
3人で宿泊したホテルは結構広めで、ベッドが二つとソファが一つで、お風呂はシャワーのみでした。設備としては、電子レンジ、自販機、Wi-Fi(名前:Cisco12345)があり、iPad、iPhoneともに問題なく使えました。寝巻きと歯ブラシはないので、持参するほうがよいと思います。また、支配人のインド系アメリカ人、シューリーさんに頼めば、料金はかかるが行きたい場所に車で送って貰えます。もちろん、頼むときは英語です。

2012/8/19(日) 山崎先生と4人でヘンリーフォードへ、ご自宅での夕食会
朝はゆっくり9:00まで休み、11:00くらいに朝の診療を終えた山崎先生に迎えにきていただき、ヘンリーフォードへ行きました。車内では感染性心内膜炎IEの講義をしていただきました。山崎先生の講義は基本的にクイズ形式なのですが、答えられない問題が出てくると、自らの勉強の至らなさを痛感いたしました。ヘンリーフォードに到着し、山崎先生が年間パスをお持ちだったので、安く入場することができました。最初は博物館に行き、車の展示やリンカーンの椅子、飛行機、発電機などなど盛り沢山の展示物を見学しました。山崎先生に博物館のカフェでホット・ドッグを買っていただき、お昼ご飯となりました。その後、外に出てファームへ向かい、北海道の牧場のような感じで、のどかで、観光客がたくさんいました。途中、アイスクリーム屋で山崎先生が弁膜症の講義をしてくださり、かなり臨床的な詳しい話で、われわれが普段目にする病みえなどの成書にのっている知識はすべて網羅する以上の深さでした。S1の試験にこそ合格していましたが、それに満足してはいけないと思いました。帰りに土産屋に寄り、ホテルに戻りました。帰ると時差ぼけで眠く、3人で少し眠りました。19:00から山崎先生のご自宅で奥様の信子さんの手料理をいただきました。久々?の日本食でおいしかったです。お子さんの大学生の娘さんと14歳の息子さんとも顔を合わせました。お子さんたちは完全にアメリカ人という感じでした。21:00に先生に送っていただき、ホテルに到着しました。明日からの実習に備えて、そして、時差ぼけのために早めに就寝しました。

2012/8/20(月) 病院実習開始――オフィスでの診察からSt. John病院のカンファへ――
時差のためか、朝は4:00 amくらいから起き出して、最終的には6:00に目覚めました。支度をして、6:50に山崎先生がホテルに到着され、4人でEastsideの診療所(オフィス)に行きました。7:00過ぎから診療開始し、われわれは1人ずつ、山崎先生と一緒に診察室に入り、患者さんと山崎先生の話に耳を傾けていました。白衣は先生のものをお借りしていました。今日は30人の患者さんがおられて、とても忙しい様子でした。1人で10回くらい診察室へ同行しました。患者さんはCABGを勧められている80代男性、不整脈の女性、アスピリン副作用でこられた女性、他の手術の前に状態をききにきた40代女性などでした。メタボリックシンドロームを伴うASHD, atherosclerosis heart diseaseの患者さんは多かったと思います。お昼はオフィスのスタッフルームで一緒にバイキング形式の料理をいただき、午後からも17:00まで診察が続きました。診察の合間にクイズを出していただけるのですが、本日はとても患者数が多いようで、いつもより少なめとのことでした。一段落したときに、心電図EKGの講義をしていただきました。それからSt. John病院に行き、カンファレンスを見学し、今日はIABP, intra-aortic balloon pumpの機材の扱い方をメーカーの女性の方がFellowの先生方に説明されていました。終わってから、そこで出されていた、これまたバイキング形式の料理をいただき、夕食となりました。食事をしつつ、山崎先生から抗血小板薬の講義を聞き、日本の循環器の試験問題を少しだけ解いていただき、解説を聞きました。これまで疑問に思っていた箇所が解消できたので、よい機会でした。そこからホテルに戻り、20:00から休みとなりました。初日からどっぷり疲れました。事前の病院実習以上にハードだと思います。
2012/8/21(火) St. John病院でのカテ見学と回診
今日は6:00に目覚めて、6:45に山崎先生に来ていただきました。St. John病院へ向かい、朝一でTAVI, Transcatheter Aortic Valve Implantationがあり、日本ではまだ行われていないので、珍しいものを見ることができました。穿刺部が1回出血し、ちょっとだけトラブルだったとのことでしたが、それ以外はスムーズな印象を受けました。TAVIはSt. John病院でも十数例目で治験段階だそうです。その後は病棟に出て、回診となりました。HIV未治療の黒人男性、午後にPCI予定の男性、間質性肺炎、肺高血圧の女性、PAD, peripheral arterial diseaseで下肢の痛みがある女性など多くの患者さんを回りました。途中で山崎先生から弁膜症の講義、不整脈の講義を聞き、16:00からカテ室へ移動し、この日は3例のカテを行われていました。先ほどの患者さんの内の3人で、PADの女性は下肢の動脈をバルーンで数カ所広げて、治療が終了し、2人目はかつてステントを入れたRCAの狭窄を広げて、無事に終了、最後の一人は服役中に狭心症を発症し病院にこられており、今回は血管造影目的でしたが、CABGをかつて施行されており、山崎先生によれば造影が難しく時間がかかったとのことです。この日はFellowの先生や看護師さんと最後に少しだけ話をして、20:00に帰りとなりました。看護師のみなさんが明るく話しかけてくださるので、疑問点などを質問しやすかったです。近くのスーパーに寄っていただき、夕食を買ってホテルへ戻りました。夕食はピザとフルーツなどでしたが、あまりにも疲れていたので、ほとんどそのままソファーで寝ていました。この日は山崎先生も「疲れがきました」と言っておられました。実習とはいえ、先生に着いて行くのはハードです。先生のタフさを間近に見ることができました。

2012/8/22(水) St. John病院にてカテ、回診。そして、AMIの治療
朝は6:15に起きて、7:10に山崎先生が迎えにきていただきました。今日は朝に2例PCIと血管造影を山崎先生が行い、われわれも鉛を着て手術室に入って見学できましたし、橈骨動脈の穿刺部も見せていただきました。ほとんど蚊に刺された程度の傷で、橈骨動脈からカテーテルを入れる方が、患者さんへの侵襲が少ないということを目で見て納得できました。そこから今日は入院患者さんの回診に入り、11:30くらいに一区切りして、スタッフラウンジでメキシコ料理をいただきました。若干、日本人には合わないかもしれないです。途中で拡張期、収縮期ともにMurmurが聞こえる黒人女性の心音を聞いたり、昨日の患者さんを診たりしました。先ほどの患者さんの話題から、心雑音の講義をしていただきました。先生は聴診からこの患者さんに大動脈弁の狭窄・逆流がともに存在すると予想されていましたが、後日、エコー所見からこの診断が当たっていることが示されていました。午後もラウンドで順次回りました。2:30から休んでいたのですが、救急にAMI, acute myocardial infarctionの27歳の男性が来られたので、緊急PCIとなり、1時間くらいカテ室4で見学していました。すぐに右冠動脈が開通し、元気を取り戻された様子だったので、循環器内科の威力を感じました。治療後の山崎先生の笑顔が印象的でした。そして、先生は何事もなかったかのように診察へ戻って、10人くらいみたところで今日は終了になりました。6:30に病院を出て、ホテルに着き、そのまま夕食になり、今日はサブウェイにて少し食べて、Krogersにて買い物をして帰りました。アラスカのカニ、寿司、フルーツ、パン、牛乳、ジュースなどを買って、ホテルに帰り、カニ・寿司を賞味して、休みました。カニの味は日本と変わらないかと思われます。寿司は明らかにまずかったです。

2012/8/23(木) ミステリーカンファ、オフィスで診療、再びSt. John病院へ
朝は5:50に目覚ましで起きて、朝食に昨日のスーパーで買ったパンとフルーツを食べました。6:50くらいにホテルに迎えにきていただき、St.John病院にて7:00からミステリーカンファレンスがあり、今回は後腹膜出血と血腫の患者さんが胸痛を訴えられていたというもので、アンギオしても正常という感じのネタでした。8:00からオフィスへ移動し診察開始です。今日も3人交代で患者さんと山崎先生の話を聞きました。定期的なフォローアップの患者さんが多かったです。診察の合間に先天性QT延長症候群のRomano-WardとJervell and Lange-Nielsenの講義をお聞きしました。夕方に来週引っ越されるという新しいオフィスの完成具合を確認してから、再びSt. John病院に戻り、Fellowの先生の血管造影を立ち会われておりました。いろいろな国からSt. John病院の先生方は来られていて、台湾、シリア、アメリカ、日本といった国名を聞きました。ちなみに、われわれを入れるとその場に居た人間の国籍は日本が一番多いという結果になっていました。この日も看護師さんたちが明るく接してくれまして、日本の手術室の雰囲気とは少し違うなと感じました。みんな暗い顔をしていません。終了後、この日はKrogersまで送っていただき、夕食にアメリカのケンタッキーを食べました。なかなか注文が難しくて、3回くらい少しずつ注文に行きました。そこから帰りにSubwayを買って、ホテルで食べました。また、この日はホテルのハウスキーピングがされてなくて、7:00くらいにフロントに文句を言いに行きました。やはり、チップを置き忘れていたのがわるかったのかもしれません。

2012/8/24(金) 実習修了。山崎先生とプールへ、そして、ご自宅でバーベキュー
朝は昨日と同じく6:50に山崎先生が来られて、そのままSt. John病院へ向かいました。今日は3年目のFellowの先生方と山崎先生を始め、上級医数人のカンファレンスで、インド系のFellowの先生がプレゼンされており、なかなか聞き取りにくかったです。8:00に終了し、そのままオフィスへ向かいました。今日の患者さんは少なめで、先生のオフィスの引っ越しも今日から開始でした。お昼はパスタとサラダ、チキンの煮付けなど。オフィスの中で食べました。15:30くらいに終了し、新しいオフィスの出来具合を昨日と同じく見に行って、山崎先生に地下室も案内していただきました。段差があって、山崎先生が作業員に指摘されていました。そこからSt. John病院へ向かい、数人回診されてから我々は先生と別れて、病院の土産屋へ行きました。先生への感謝の気持ちということで、3人で亀の大きな丸い縫いぐるみをプレゼントすることにしました。なかなか面白い土産物が揃っていて、デトロイトのお土産はここで買うのがいいと思いました。そこから山崎先生の家に寄っていただき、奥様の信子さんに用意していただいた水着を持って市民公園のプールへ向かい、土曜日に見たとおり、なかなかの広さで、楽しめました。というか、3人とも数年ぶりのプールで、新鮮でした。ウォータースライダーに乗り、3 mくらいの飛び込み台から飛び込んでいました。ちなみに3 mから飛び込めないと実習を修了できないそうなのでご注意を(笑)。結局、1時間くらい泳いで、帰りとなりました。そのまま山崎先生宅へ向かっていただき、信子さんに用意していただいた野外でバーベキューを楽しみました。ビールもいただきましたが、格別においしかったです。マシュマロも残り火で焼き、アメリカの雰囲気を感じました。プレゼントの亀の縫いぐるみもお渡しして、一緒に写真を撮り、21:00ごろにホテルへ送って頂きました。この日の解放感・達成感は筆舌に尽くせません!

2012/8/25(土)から 実習終了後
25日は奥様の信子さんに迎えに来ていただき、森と私はDIA, Detroit Institute of Artへ、青木はその足で空港に行ってサンフランシスコ向かいました。26日に森と私はデトロイトを去り、ワシントンD.C.へ向かい、そこで観光してから日本に戻りました。

全体を通して
主な実習内容は山崎先生に付いて回るということだったのですが、想像以上に充実しておりました。時が経つのが異常に早かったです。アメリカでの日本人医師の働きぶりを知ることができ、今まで知らなかった世界を体験した気分です。まさに一瞬にして過ぎ去る夢のようなひとときでした。また、日本での準備期間も今までの大学生活では味わえない経験でしたので、有益でありました。このような機会に恵まれまして、幸運だったと思います。それでは、今回の実習に関わっていただきましたみなさまのますますのご活躍、ご発展を願いまして、筆を置かせていただきます。

 

デトロイトでの研修レポート 京都大学医学部医学科4回生 青木 光

今回、循環器内科の中川義久先生、尾野亘先生のご紹介のもと、アメリカのデトロイトで医師をされている山崎博先生のもとを訪れ、診療見学、実習をさせていただきました。アメリカの臨床現場を生で見ることが出来、また先生の話を直で聞くことの出来た今回の経験は、非常に貴重で、何事にも変えがたい良き経験となりました。以下、レポートを書かせていただきます。
 S1講義の中で、中川先生が授業の冒頭で、山崎先生の紹介をされて、そこで初めて循環器内科の海外研修のことを知りました。アメリカで臨床医をされている先生のもとで、病院実習をさせていただけることは、非常に魅力的で、またとない機会と思い、思い切って立候補しました。
 デトロイトでの病院実習の準備として、7/30~8/3まで、京大の循環器内科でポリクリをさせていただきました。今まで、四回生ということで日本でも病院実習を行ったことがなかったので、準備としての京大での病院実習は、非常にためになりました。一週間という短い時間でしたが、内容は五回生で行うポリクリと同じ内容でした。患者さんと直接話したり、聴診器を使用したり、PCIやアブレーションの見学など、初めての経験で得られることも多く、アメリカの病院実習の際にも、この経験が生きたと思います。また、京大で病院実習を行ったことで、日本とアメリカの違いについても比べることが出来、よりデトロイトでの実習が実りあるものとなったと思います。
 デトロイトでの実習は、St.John病院と、先生がグループで開業されている診療所の二箇所で行いました。基本的には、先生について、診察の見学やカテーテルの見学、合間に先生に問題をだしてもらい、そこからディスカッションを行う、というものでした。毎日朝7時から夜8時くらいまで病院にいるという一週間でした。デトロイトは自動車産業のイメージしかなかったのですが、実際は想像していたのと大きく違い、自然の多い、とても過ごしやすい場所でした。
 まずは、St.John病院での実習について書きたいと思います。St.John病院は、とても広く、ホテルのようにきれいな病院でした。ここでは、入院患者の回診、PCI見学の他、TAVIといってまだ珍しい治験段階のカテーテル治療やAMIの緊急カテを見学する機会もあり、また様々なカンファレンスにも参加させていただきました。St.John病院には、カテーテル室が10部屋ほどありました。血管造影やPCIについては、多くの医者が橈骨動脈を選んで行っていましたが、この病院ではDr.Yamasakiが最初にやり始めて広まったんだよ、とフェローの先生に教えていただきました。少し、誇らしい気分になりました。橈骨動脈から行う一番の利点はもちろん低侵襲であることで、実際に傷口を見せていただいたところ、虫に刺された程度の傷にしか見えませんでした。先ほども述べましたが、実習を行った一週間には、TAVIとAMIを見る機会があり、運が良かったです。TAVIとは、アメリカでも治験段階の新しい治療で、最先端の術式を間近で見られたのは、本当に良かったです。大動脈弁置換も、カテーテルを用いればたった二時間ほどで終わってしまうというもので、良い治験結果が出ればよいなと思いました。緊急カテとなったAMIの患者さんは、20代の方で、非常に若い方でした。動脈硬化は20代にはすでに始まっている、とのことですが、そのことを実感せずにはいられませんでした。AMIは、治療しなければすぐに死亡する病気ですが、先生が緊急カテをされたおかげで、術後は何事も無かったかのように元気に会話されていました。実際にカテーテルをいれている時間は、15分ほどであったように思います。術後、家族と恋人にカテーテルの結果説明をされ、感謝される姿を見て、循環器内科医の魅力を体感させていただきました。St.John病院では、医師、看護士、検査技師などの仲が非常に良く、みなさん楽しく働いているといった印象でした。私たちに対しても、親切にいろいろ教えてくださいました。また、インドや台湾などアジア系の先生も多くいらしゃいました。日頃は和気藹々とのんびりしている印象でしたが、一旦緊急カテとなると、その切り替えもすばらしく、手際や連携が非常によく、本当のプロフェッショナルだなと感じました。山崎先生は、自分がPCIをする一方、若手を指導したりと、数部屋のカテーテル室を忙しく行き来したりしておられました。また、実際にカテ室に入らせていただいたときには、日本よりもアメリカの方が、放射線に対してセンシティブだと感じました。
 次に診療所での実習についてですが、山崎先生は、グループ開業もされているため、診療所で診療見学する機会もありました。グループで開業することについては、日本と大きく違う点だと思います。グループで開業することで、初期費用が日本ほどかからずに済むため、アメリカでは医師になってすぐに開業する人も多いそうです。そのかわり、グループ間で揉めないようにうまく対処しなければならず、それなりの苦労もあるそうです。日本では、開業すると、手術道具などの高価な器具がないため専門的な治療が行えない、といったことになるが、アメリカでは少し違っていた。グループで開業するがゆえに、毎日診療所に行く必要がなく、山崎先生のように、他の病院の勤務医を兼任することが普通だそうです。これにより、外来で来た患者さんで、PCIなどの治療が必要となれば、St.John病院に来てもらい治療を行えるし、術後の定期通院は、診療所のほうに来てもらうといった流れで、最後まで患者さんを診ることが可能だそうです。このように、グループ開業であるために、開業しても専門性を維持できることが、魅力の一つとおっしゃっていました。診療所では、主に外来患者さんの診察を見学させていただきました。六ヵ月毎の定期診察の方もいれば、入院して血管造影することを勧めることもありました。アメリカ人、特に心疾患のある患者のBMIは、非常に高いものでした。肥満が社会問題というアメリカの現実がよくわかりました。先生は診察の最後に、減塩、運動、禁煙の重要性を毎回といっていいほど、おっしゃっていました。診察の前に、カルテを見せてもらうのですが、最初は、英語で書かれているためにわかりにくかったのですが、最終日に近づくにつれ、あぁこの患者はこういう病気で背景はこうなのか、と短時間で要点を理解できるようになりました。リスニングに関しては、聞き取れるか個人によって差が激しかったです。ほとんど聞き取れる方もいれば、なまっている上にぼそぼそ話される方もおり、ほとんど理解できない、ということもありました。
 今回、日本で病院実習すらほとんどした経験のない状態で、アメリカで実習させていただくということで、有意義な研修を行えるのか若干心配していましたが、先生のおかげで、非常に有意義な時間を過ごせたと思います。アメリカで実際に働かれている先生の姿を直に拝見し、話を聞く中で、様々なことを感じ、学ばせていただきました。アメリカで働くということが、将来の選択肢の一つになった、とまではいきませんが、漠然とした憧れから、少しは身近に感じられるようになったと思います。なにより、医師という職業の素晴らしさを改めて感じさせていただきました。山崎先生には、実習中はもちろんですが、それだけでなく、実習の前後にデトロイトの街並みやヘンリーフォード博物館を案内してもらい、市民公園、プールにも連れていただき、また、送り迎えもすべてしていただき、滞在中は何から何までお世話になりました。今回、アメリカの臨床現場を見学するという貴重な経験をさせていただき、本当にありがとうございました。信子さんも、明るく迎えていただき、そして二度もおいしいご飯をご馳走していただき、本当にありがたかったです。感謝いたします。
 最後になりましたが、今回山崎先生を紹介していただいた中川先生、募集からポリクリの準備までしていただいた尾野先生をはじめ、ポリクリでお世話になった先生方、秘書の清水さん、本当にありがとうございました。今回得た貴重な経験を無駄にすることの無いよう、これからも日々精進していきたいと思います。

 

デトロイト実習レポート 京都大学医学部医学科4回生 森 拓人

8/18から8/30までの5日間、デトロイト在住の山崎博先生のもとで病院見学等をさせていただきました。メンバーは平成21度入学の青木光、伊藤秀一、森拓人の3名です。勉強させていただいたことをまとめるとともに、印象に残ったことをレポートにしたいと思います。
1.外来
Eastside cardiovascular Medicineにおいて外来見学をさせていただきました。山崎先生が7名の他のお医者さんとともに共同経営されている病院で、日本の開業病院よりもはるかに大きな病院です。先生は通常Officeと呼んでおられる場所で、山崎先生を頼って来院される患者さんは一日に30名ほどで、我々は一人ずつ先生の後ろについて見学したので、今回は毎日10名ほどの患者さんの診察を経験させていただきました。受診目的としては半年に一回の経過観察で処方箋をもらいにきている方がほとんどで、どの患者さんも60代から70代のご年齢で、罹患している病気は心房細動や動脈硬化に起因する心疾患(ASOを含め)、高血圧が大半でした。また日本人よりも多種の病気を同時に抱えている方の割合は高く、糖尿病、高血圧、腎臓病など代表的慢性疾患がカルテにずらっと並んでいました。今回見学して一番驚きだったのが先生と患者さんの会話がいかにフランクだったということです。握手から始まり、声の調子も明るく、ざっくばらんに何でも話し、病院の中の会話というより昔からの友人と世間話をしているかのような印象でした。患者さんは我々学生にも気さくで、先生が日本からの学生であると紹介してくださったときにある患者さんは「Dr. Yamasakiはこうこうすごいお医者さんで、あなたもアメリカでこの先生のように診療したければまずはfellowになって…」と話してくださり、大学を出てからずっとアメリカで努められていた先生の努力と信頼関係がいかに大きいかを少し垣間見た瞬間でした。

2.カテーテル
カテーテル手術はSt. John hospitalにて見学させていただき、いくつか見た中で特に印象的だったのはTAVIの手術です。St.John hospital病院では治験としてリスクの高い大動脈狭窄症の方にTAVIを施行しており、今回が確か6例目であったと思います。日本では京大病院で確か来年度からの実施ということで、同行の友人とTAVIを初めて見る日本人学生ではないかと興奮いたしておりました。TAVIは人工弁を内蔵したステントを石灰化の進んだ大動脈弁に留置するカテーテル手術で、ステントが開き、モニターで圧較差が解消された瞬間は感動しました。さらに周りの看護婦さんや技師さんがやさしい方々で、手術中TAVI自体の解説や、モニターや経食道エコーの見方を説明してくださいました。

3.回診
St. John hospitalにおいて先生が受け持っておられる患者さんの回診を三人で同行しました。Officeで様子を見ていてSt. John hospitalでカテーテル治療をするために転院した方や他科より循環器領域でコンサルトされた方の診察でした。今回の見学では幸運にもある一人の患者さんの受診から治療までをすべて拝見できました。通常の病院実習では診療所と大病院を同時に見ることはなかなかできないので、患者さんの目線で見たときの経過を実感できました。Officeでの診察では、最近足の色が悪くなり、痛くて歩けないとの訴えておられました。先生は、ASOと判断し、すぐ手術をしなければならないと伝え、St. John hospitalに入院されました。カテーテル手術では最初にASOの進行度を造影剤でチェックし、その後、実際にカテーテルで治療を受けられた結果、いくつもあった狭窄部位がほとんど解消されていました。治療後患者さんを訪問した際は、あんなに黒かった足がきれいにほんのりピンク色に変わり、さらには自分の体重をしっかり支えられるようにまでなっておられました。何より、手術のおかげで歩けるようになって嬉しそうにしている患者さんの顔が心に残っています。今回の回診では他には、間質性肺炎やAIDSなど他科の疾患も見学できました。当初循環器内科の先生につくということで想定していなかったのですが、循環器領域が体のあらゆる部分に関わっているのだなと実感しました。

4.今後必要なこと

今回一番必要性を感じたのは英語です。Nativeの会話の速さはほんとに早いです。外来で先生と患者さん、その家族の会話を聞いた実感として今まで聞いていたListeningの速さをはるかに凌駕していて、年配の方がゆっくり話しておられる速さでやっと聞き取れるくらいのものでした。今までやっていた英語の学習ではまだまだ甘く、まだまだ自分は不勉強だなと痛感いたしました。しかしながら、少し勇気付けられたことに、実際にアメリカの病院で働かれている方は本当のNativeは少なく、他国から移住してきて第2言語として英語を学習している方が多く、大体の方が自分の母国語を引きずって話されていました。それでも仕事上の会話は何ら支障なくこなされていました。それに多くの方がある程度下手でも私の英語を一生懸命聞いてくれるくださったことは非常にありがたかったです。今回得た教訓は発音どうこうより自分から何か伝えようと頑張ることが大事なんだろうということです。楽観的かもしれませんが、自分の気持ち次第で言語は何とか習得できるものの気がいたしました。今まで海外に行ったこともなかった自分にとって実際の英語に触れられる貴重な体験でした。

また医学知識ももっともっと身につけたいと感じました。今回の研修の合間を縫ってdiscussion形式で循環器領域の質問を先生は投げかけてくださいました。先生の話を理解すること、向こうの手術の内容を理解するのには大学の講義、普段の日本の教科書で勉強する病態生理で何とか理解まではたどり着けました。しかしながらたとえば大動脈弁狭窄症の患者さんがいて、治療をどうするかどのように決定するかという時に必要な実践的知識は病態生理だけではまだまだ不足していて、今後の勉強として自分が患者さんを受け持ったときにどのように診断し、どのように治療指針を立て、どのように実際治療していくのかという実地で必要となる知識の身につけ方に変えていこうと思いました。

5.全体の印象
少し前で触れましたが、アメリカで研修を受けている医師や看護師は世界各国から来ており、St. John hospitalではインド、台湾、パキスタン、レバノン、ヨーロッパ各国、そしてアメリカ本土の多国籍の方で構成されていました。アメリカの良い点として異文化、異国に対して寛容な下地がある印象です。ただ実際に研修をアメリカで行いたければかなりの倍率を潜り抜ける必要があり、厳しいとのお話でした。また病院の雰囲気ですが、非常に明るく、気さくな方ばかりでした。カテーテルの手術中も、会話をすることで気持ちを明るく明るくしているようです。職場として働きやすい環境だと思います。さらにdiscussionがよく行われていました。カンファレンスの中にはクイズ形式にした症例報告があり、予め何の症例かは告げずに、discussionの中で最終診断にたどり着くような、日本ではあまりない形のものがあり、新鮮でした。

7.最後に
今回京大循環器内科の先生方の紹介で山崎先生に出会うことができて、本当に貴重な経験をさせていただきました。毎日7時から夜は9時あたりまで患者さんのために粉骨砕身されている先生の姿を見て憧れるとともに、先生が披露してくださった医学的知識の奥深さを考えると、患者さんを救うためにはそれ相応の努力が必要だということがひしひしと伝わってきました。今回の研修を単なる社会見学とせず、将来に向けた人生経験とするために、今後日本で研鑽に励みたいと思います。最後になりましたが、今回循環器内科の講義において山崎先生を紹介してくださいました中川先生、論文抄読会など約半年に渡ってお世話してくださいました尾野先生、また事前の京大循環器内科での実習でお世話になりましたスタッフの皆さまに厚く御礼申し上げます。そして、山崎先生とそのご家族の方々には、日常の生活の何から何までお世話になり、ご迷惑をおかけしたことをお詫びするとともに、アメリカの医療を紹介していただき、日本では決して味わえない貴重な体験を我々に経験させてくださいまして、本当に感謝しております。先生方のおかげで非常に楽しい夏休みでした。ありがとうございました。


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